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漫画「みぃちゃんと山田さん」│今話題のあの作品…切なさと絶望と希望と

こんにちは、2児育児+ワンコ1匹の基本テレワークで日々あがいているぽんです。いつも訪問ありがとうございます(ブックマーク・スターもありがとうございます)。ブログ更新の励みになっています

「みいちゃんと山田さん」既刊5巻まで感想

いせ――やさしさの輪郭と、取り返しのつかない現実について

「みいちゃんと山田さん」は、一見すると少し肩の力が抜けたタイトルですが、読み進めるほどに胸の奥が静かに、しかし確実に締めつけられていく作品です。派手な事件や大きなカタルシスがあるわけではありません。それでもページをめくる手が止まらなくなるのは、この物語が“誰かの人生の途中”を、驚くほど誠実に描いているからだと思います。

物語の中心にいるのは、どこか危うさを抱えた「みいちゃん」と、彼女を見守る立場にある「山田さん」。二人の関係は、単純な友情や保護者的な立場では言い切れず、そこには優しさと距離感、善意と無力さが複雑に絡み合っています。この曖昧さこそが、本作を読み終えたあとに残る感情の正体なのかもしれません。

みいちゃんという存在のリアルさ

みいちゃんは、読者が簡単に「かわいそう」「守ってあげたい」とラベリングできるキャラクターではありません。どこか抜けていて、空気が読めないようで、でも決して愚かではない。自分なりに必死に世界と折り合いをつけようとしている姿が、とても生々しく描かれています。

彼女の言動は、ときに読者を苛立たせます。なぜそこでそうなるのか、なぜ危険を察知できないのか、と。けれどそれは、みいちゃんが「物語の都合で動くキャラクター」ではなく、現実に存在し得る一人の人間として描かれている証でもあります。判断力や経験、環境の差が、人生をどれほど簡単に分岐させてしまうのか。その残酷な現実が、みいちゃんを通して突きつけられます。

山田さんの優しさと限界

一方の山田さんは、読者にとって感情移入しやすい存在です。常識があり、社会的な立場もわきまえていて、だからこそ「正しい選択」をしようとします。しかし、その正しさが必ずしも誰かを救うわけではない、という現実がこの作品では丁寧に描かれています。

山田さんは、みいちゃんを助けたいと思っています。けれど、どこまで踏み込んでいいのか分からない。善意でできることと、越えてはいけない一線。その間で揺れ続ける姿は、非常に人間的です。読んでいるこちらも、「もし自分が山田さんの立場だったら」と考えずにはいられません。

そして気づかされます。優しさだけでは、どうにもならない場面が確かに存在するのだと。

5巻までで積み重なる“取り返しのつかなさ”

既刊5巻までを通して感じるのは、物語が常に「最悪の一歩手前」を描き続けているということです。まだ決定的に壊れてはいない。でも、確実にヒビは入っている。その緊張感が、読者の心を離しません。

みいちゃんの選択は、後から振り返れば危険だと分かるものばかりです。しかし、その瞬間の彼女にとっては、それが最善、あるいは唯一の選択肢だったようにも見えます。この「その時には戻れない感じ」が非常につらい。人生はセーブもロードもできないという当たり前の事実を、これほど静かに突きつけてくる作品はそう多くありません。

描写の抑制が生むリアリティ

本作が印象的なのは、過激な表現に頼らない点です。読者の想像力に委ねる描写が多く、だからこそ余韻が残ります。直接的に描かれないからこそ、「この先に何があるのか」を自然と考えてしまう。その想像が、現実のニュースや身近な出来事と重なり、物語がフィクションであることを忘れさせます。

また、絵柄も決して感情を煽りすぎません。淡々とした線と表情が、逆に登場人物の孤独や不安を際立たせています。泣かせに来る演出ではないのに、気づけば胸が苦しくなっている。その静かな力が、この作品の大きな魅力です。

読後に残る問い

「みいちゃんと山田さん」を5巻まで読んで残るのは、明確な答えではありません。「誰が悪いのか」「どうすればよかったのか」という問いに、簡単な結論は用意されていません。ただ、見過ごされがちな人、声を上げられない人、気づかれにくい危うさが、確かにそこにあるのだという事実だけが残ります。

そして読者は、自分自身の日常を振り返ることになります。気づかないふりをしている誰かはいないか。助けたいと思いながら、距離を保つことで安心していないか。そんな問いが、静かに心に沈んでいきます。

おわりに

「みいちゃんと山田さん」は、読んで楽しい漫画ではありません。読み終えたあと、少し疲れて、少し考え込んでしまう作品です。それでも読む価値があるのは、この物語が現実と地続きであり、私たちの世界の一部を確かに映しているからだと思います。

5巻までの時点では、まだ救いも破滅も断言できません。ただ一つ言えるのは、この物語を読んでしまった以上、みいちゃんの行く先を見届けずにはいられない、ということです。その重さこそが、本作の誠実さであり、強さなのだと感じています。

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