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『BEASTARS ファイナルシーズン』解説・感想レビュー

はじめに
『BEASTARS』は、作者・板垣巴留による漫画を原作とし、「肉食動物」「草食動物」という種族の対立を背景に、“共存”や“本能”、そして“アイデンティティ”を問いかける傑作アニメです。シリーズを通して描かれてきた主人公・レゴシの葛藤や、名声ある鹿・ルイの矛盾、そして草食と肉食の境界を揺さぶる数々の事件。
今回、その最終章にあたる「ファイナルシーズン」(第3シーズン、Part 1)を対象に、物語構成・テーマ・キャラクター・演出面・長所・短所・そして私の感想という流れで解説・レビューをお届けします。なお、 内容にはネタバレ を含みますので、未視聴の方はご注意ください。
1. 構成・ストーリー展開
ファイナルシーズンでは、まず第1部(Part 1)が公開され、物語はいよいよクライマックスへ向けて舵を切ります。レゴシは、これまでの高校生活や劇団活動から一歩離れ、肉食動物としての本能と草食動物との“共存”という理念の間で深く揺れ動きます。
同時に、草食動物としての人気者ルイが抱える内面的な葛藤、そして新たな敵対組織・海賊的暴力構造「シシグミ」やエネルギー飲料「Kines(キネス)」をめぐる事件など、社会的・犯罪的なテーマが強く押し出されます。たとえば、レゴシがKinesの現場で、草食動物の骨や肉が素材に含まれていることを嗅覚で察知する場面があり、シリーズがこれまで扱ってきた“肉食/草食のタブー”が新たな形で描かれています。
ペーシングについては賛否両論です。レビューでは「アニメーション・演出面の質は高いが、物語の進行が駆け足に感じる」「原作の内容をかなり圧縮しており、説明不足と感じる視聴者も多い」という声もあります。
2. テーマ・メッセージ
本作が今回改めて強く打ち出すテーマには以下のようなものがあります。
(1) 共存 vs 本能
肉食/草食という構造そのものが比喩となっており、「異なる存在(種族)どうしの共生」という命題が、レゴシという肉食動物を通して描かれています。彼は本能を抑えながら草食動物を守ろうとしますが、最終章ではその矛盾・葛藤がより深刻になっていきます。
また、新キャラクター・メロン(混血種)が登場し、“境界”そのものへの揺らぎや、どこにも完全に属せないというアイデンティティの苦悩が提示されます。
(2) 社会構造・差別・抑圧の寓意
肉食/草食という分け方を超え、階級・社会秩序・薬物・黒市場といった現代社会の構造を映すモチーフが多数登場します。たとえば、Kinesという薬物をめぐる事件、草食動物優位/肉食動物劣位の既成秩序、混血種/交雑の存在。こうしたテーマの重なりが、作品を単なる動物アニメ以上のものに押し上げています。
(3) アイデンティティと自己受容
レゴシ自身の過去(母の自殺、肉食動物としての罪悪感)と向き合う場面が特に印象的です。また、ルイは自身の人気・成功の裏に孤独や葛藤を抱えており、「見られる者」「持たざる者」としての立場に引き裂かれています。物語を通して「自分は誰か」「どこに属すか」という問いが繰り返されます。
3. キャラクター分析
レゴシ
これまで控えめで“守る者”として描かれたレゴシですが、ファイナルシーズンでは“闘う者”の側面も強くなります。彼のもどかしさ・弱さ・優しさが丁寧に描かれ、演技・動き・表情でその心情の揺らぎが視覚化されています。ただし、「行動の意図や裏付けが薄く感じられる」という指摘も少なからずあります。
ルイ
華やかで人気者の鹿でありながら、自分が“成功者”として演じていることを自覚しており、その裏での孤独・弱さ・他者からの期待とのギャップに悩んでいます。ファイナルシーズンでは、草食・肉食という境界を問い直す存在としても機能し、性的マイノリティ的読み取りをされる場面も出てきます。
メロン & 獅子組
新たな敵対構造として登場したシシグミ、そのリーダーたる混血種・メロンは、“境界に生きる者”として物語に強烈な影響を与えます。彼の背景、動機、弱さ、暴走のプロセスが、物語の緊張とテーマを牽引します。
4. 演出・映像・音楽
制作スタジオ・スタジオオレンジによる3DCGアニメーションは、シリーズ通して高い評価を受けており、ファイナルシーズンでもそのクオリティは保たれています。キャラクターの造形、背景のスケール感、さらにカメラワーク・構図の意識が高く、「動き」で感情を伝える演出が際立っています。ただし、「前2シーズンに比べると構図に違和感がある」「演出の飛びがある」という指摘もあります。
音楽・声優演技についても概ね肯定的に評価されており、特にレゴシ役の声の演技や緊張感あるBGM・挿入曲が物語の雰囲気を支えています。一方で「既存のテーマ曲・BGMの使い回しが目立つ」「盛り上げどころで音楽が効いていない」という声も散見されます。
5. 長所・短所・評価
長所
- 世界観の深化:これまでの“肉食/草食”という対立に、社会構造・薬物・境界・混血など、複数のレイヤーが加わり、物語に深みが増しています。
- キャラクターの多層性:レゴシ・ルイ・メロンらが“内的な葛藤”を抱え、それぞれの立場や矛盾がしっかり描かれています。
- 演出・ビジュアルのクオリティ:シリーズを通して培われた技術力が、最終章でも遺憾なく発揮されており、観る者を物語世界に引き込む力があります。
- 大人向けのドラマ性:青春ものを脱し、社会ドラマ・心理サスペンス的なトーンも増しており、観る者の解釈を促す作品になっています。
短所・批判点
- ペーシング/構成の粗さ:物語が短期間で多くの展開を詰め込んでおり、「駆け足」「説明不足」「映画的時間の省略」が指摘されています。
- メッセージの曖昧さ:扱われるテーマが多岐に渡る分、「最終的にどんな答えを出すのか」が見えにくいと感じる視聴者もいます。
- 分割構成による中断感:後半(Part 2)が後日公開予定ということで、今のところ「完結していない」という印象が否めません。
- 初見ハードルの高さ:シリーズ1・2を踏まえていないと背景・設定に置いてけぼりになると感じる声もあります。
6. 私の感想
個人的には、ファイナルシーズンの前半は「シリーズとして持っていたポテンシャルをしっかり感じさせる作品」でした。レゴシの葛藤、ルイの孤独、メロンの狂気、草食/肉食という単純な対立を超えた“境界”のテーマ、これらがきちんと混ざり合っており、視聴中に「この物語は深い」と感じました。
同時に、「あと少しだけ“完結感”が足りないな」というもどかしさも感じました。ラストの展開でレゴシが崖から落ちる…という大きな引きがあり、続きが気になる反面「今一区切り?」という印象を受けました。これは、分割構成ゆえの宿命かもしれません。
また、私が特に好きだったのは、レゴシが“守る側”から“問いかける側”へと変化していくプロセスです。自分が何者か、どこに属すのか、そして共存とは何かを問い続ける姿に、深く惹かれました。一方で、映像美・演出の質と比べると、物語の構築がやや粗いと感じる部分もありました。もっと丁寧に描いてほしかった伏線・心理描写もあります。
総じて、「完璧ではないが、観てよかった」と感じる作品です。続きを観る楽しみを得られたという意味でも、私は高く評価しています。
7. 総括
『BEASTARS ファイナルシーズン(Part 1)』は、シリーズの集大成としてふさわしい要素を多く備えつつ、まだ“問い”の段階であるという印象も残しました。世界観・キャラクター・テーマともに成熟していますが、構成の面で“惜しい”ところもあります。
それでも、「この世界の続きが知りたい」「このキャラクターたちのその後が気になる」という気持ちにさせる力が確実にあり、視聴者を作品世界に深く引き込む魅力を備えています。シリーズファンにはぜひ観てもらいたいし、未視聴の方も“異種族の寓話”としての本作のテーマに触れてみる価値は十分にあると思います。
後半(Part 2)でどれだけ問いが回収され、どんな結末を迎えるか。この続きを観るための土台として、ファイナルシーズン前半はしっかり機能していると感じました。
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