
こんにちは、2児育児+ワンコ1匹の基本テレワークで日々あがいているぽんです。いつも訪問ありがとうございます(ブックマーク・スターもありがとうございます)。ブログ更新の励みになっています
1.物語のイントロダクション
本作では、児童相談所職員である夏目アラタ(柳楽優弥)が、ある少年からの“父親の首を探してほしい”という依頼を受け、死刑囚・品川真珠(黒島結菜)との面会に臨むところから物語が始まります。真珠は「品川ピエロ」という異名を持つ、社会的に衝撃を残したバラバラ殺人事件の被疑者・被告。被害者のうち、首が未発見の被害者の遺族・山下卓斗が、文通していた真珠と直接会うためにアラタに面会を頼むという流れです。
アラタは元ヤンという過去を持ちつつ児童相談所で働いており、「弱者を守る」という立場にありながら、少年の依頼を受けて犯人と思しき人物との駆け引きに身を投じていきます。面会の場面では、20分という制限時間が設定されており、そこに緊張感が生まれます。
その面会で、思いがけず「結婚しよう」とアラタが真珠に言い放ち、獄中結婚という“異様な取り決め”が始まるのです。本作のタイトルにもなっているこの「結婚」が、事件解明、心理駆け引き、救済の物語を進めるキーとなります。
2.前半〜中盤:面会そしてプロポーズ
面会室に入ったアラタは、真珠が手紙を書いた相手ではないと見破られてしまいます。真珠はアラタを見るなり「お前はあの手紙を書いたやつじゃないだろう」と、鋭く問いかける。アラタはその場を何とか乗り切るために咄嗟に「結婚しようぜ」と発言し、真珠の興味を引き、面会時間を延ばすことに成功します。
この時点で既に、アラタの目的は明快です:被害者のひとりであり首が発見されていない山下良介の首を真珠から引き出したい。真珠は死刑囚として収監されており、情報を出さない立場にあります。アラタは「結婚」の契約を用いて心理的優位を取ろうと試みるわけです。
その後、毎日20分という時間のなかで、アラタは真珠の言葉、表情、心理を読み解こうとします。真珠は一筋縄ではいかず、「ボク、誰も殺していないんだ」と衝撃の告白もします。これが事件の前提(=真珠=殺人犯)を揺さぶる伏線として機能します。
また、真珠の幼少期や知能検査のデータ、虐待可能性のある家庭環境などが断片的に描かれ、「彼女に何かがあった」という暗い過去が想起されます。このように、物語は “加害者としての真珠” と “人間としての真珠” を並列で見せながら、観客に真実を問いかけてきます。
アラタもまた、自らの過去(元ヤンであったこと、児童相談所職員という現在の立場)や動機(少年の依頼を受けたこと、自らを救いたいという思いも含まれる)に揺らぎを覚えつつ、真珠という存在の内側へと入り込んでいきます。
3.謎の深化:真珠の過去と駆け引きの展開
話が進むにつれて、真珠の背景がより深く描かれます。幼少期、知能テストで低いスコアを出していたが、逮捕時には飛躍的に高い数値を示していたというデータが紹介されます。これは、彼女が“何かを経験した”証とも読み取れる伏線です。
また、真珠は「死にたがる人を助けてあげたかった」という死生観を持っていたことが示唆されます。たとえば母親の「一緒に死のう」という言葉を幼少期に聞いていた可能性や、死を望む者への“救済”としての犯行・遺体処理という仮説が提示されます。
このあたりでアラタは、真珠の言動から「本当に彼女が犯人なのか?」「彼女は利用されているのか?」「真珠を通して真実を引きずり出せるか?」という問いに直面します。真珠はアラタの言うことを次々と試し、翻弄します。ある日、真珠は過去の被害者の隠された遺体の在処を語り始め、アラタは大きな手がかりを得たかのように見えます。
しかしその情報が真実なのか偽りなのか、アラタ自身が信用できず、かつ自身も心理的に追い込まれていきます。真珠の態度の変化、アラタの動揺、そして被害者遺族の動きが三者三様に展開していき、「事件解明」という枠にとどまらない人間ドラマが立ち上がります。
4.クライマックス&ラスト:真相と結末
ついに物語はクライマックスを迎えます。真珠が「私は殺していない」と語っていたのに対して、実は“姉の代わりに育てられた替え玉”という驚愕の裏設定が明かされるのです。この事実により、真珠が事件当時未成年だった可能性が浮上し、死刑判決が覆る展開へ。
具体的には、真珠の母親が生んだ本来の「真珠」は生後5か月で死亡しており、母親は妊娠していた妹(代替)を「真珠」として育てたという設定が出てきます。よって逮捕時に彼女が未成年であったという事実が、量刑に影響を与えます。結果として、真珠は死刑判決から懲役刑に減刑され、仮釈放へ進む道が開かれます。
また、アラタは真珠との結婚という契約を本当に続けることを決め、獄中結婚という形を維持します。ラストシーンでは二人が「神前式」を想像して行う儀式的な描写があり、物語は「結婚」という形が終着点ではなく、新たな始まりであるという余韻を残して締めくくられます。
この結末には、被害者遺族・加害者・支援者・制度が入り交じる中で、正義や救済、罪と向き合うとは何か…という問いが含まれています。完全なハッピーエンドと呼ぶにはためらわれるけれども、希望の兆しを見せるラストと言えます。
5.テーマと考察ポイント
● 罪と救済、被害者と加害者の曖昧さ
本作の大きなテーマのひとつが「被害者/加害者の境界線の曖昧さ」です。真珠は加害者として裁かれた側ですが、同時に「死にたがる人を助ける」という“救済者”のような動機を持っていた可能性があります。アラタもまた、加害者の情報を引き出す存在として“犯人と結婚”という異質な役割を担います。被害者の遺族である卓斗、彼を支えるアラタ、真珠の複雑な背景…これらが相互に絡み合い、「誰が悪者か/誰が救われるべきか」という単純な二項対立を破壊します。
● 制度・面会・拘束された状況の中での人間関係
20分という面会時間、獄中という物理的拘束、結婚という社会的契約…これらの制限された設定が、人物たちの心理を浮き彫りにします。アラタが真珠と“結婚”という形を選んだこと自体が、制度の隙間を突く行為とも取れます。真珠の面会室での言動、アラタの裏目的、情報の駆け引き…すべてが“閉ざされた場”での人間ゲームとなっています。
● 人間の孤独・承認欲求・繋がりたいという欲望
真珠が「信じてほしい」「私を見てほしい」という欲求を抱えていること、アラタが「依頼を果たしたい」「自分自身の価値を証明したい」という思いを抱えていること、卓斗が「父の首を知りたい」「父の死を理解したい」という願いを持っていること。これらが交錯して、事件という“外側の”ドラマを超えて、人間の内面の闇と光が描かれます。
● 映画版ならではの演出・原作との違い
本作は原作漫画が未完結の段階で映画化されており、結末や背景が映画オリジナルの展開を見せています。そのため、原作ファンは「ここが違う」と感じる箇所がある一方、映画単体としてはコンパクトにまとまった構成でもあります。映像演出としても、面会室のアクリル板、雨のシーン、ハンカチ、小道具—そうした細部が“駆け引き”と“関係性”を映し出しています。
6.観賞後に残る問いと見どころ
- 真珠は本当に犯人だったのか、または誰かに操られていたのか。
- アラタの「結婚」という選択は倫理的に正しかったのか。
- 被害者遺族・卓斗は真の意味で救済を得られたのか。
- 結婚という形が持つ意味とは?契約、儀式、愛情、駆け引き—どれだったのか。
- 映画版が提示した“真実”と原作が描こうとした“真実”の差異をどう捉えるか。
観た後、誰かと語り合うと非常に面白い作品です。たとえば「あなたならアラタの立場ならどうするか」「真珠と結婚する/しないという選択をどう評価するか」といった視点での対話も深まります。
7.総括
『夏目アラタの結婚』は、極めて衝撃的な設定(死刑囚との獄中結婚)に加え、人間ドラマ・心理サスペンス・倫理的問いかけを融合させた作品です。単なる“事件を解くサスペンス”ではなく、登場人物の心の闇や救済願望、制度との関係性を含んだ厚みがあります。
映像作品としても、駆け引きの緊張や、不穏な空気感、美しいものと禍々しいものが交錯する描写が際立っています。そしてラストにおいて、「救い」「希望」「答え」を完全には提示せず、観客自身に問いを託す構成で終わるため、観た後も胸に残ります。
▼▼ドメイン取るならやっぱり▼▼
▼▼ナウでヤングなドメインがいっぱい▼▼
▼▼はてなブログでもお馴染み▼▼
▼▼ブロガーの強い味方▼▼
▼▼ランキング参加しています▼▼