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劇場版「ほんとうにあった怖い話〜変な間取り」考察・感想

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映画概要

『劇場版 ほんとうにあった怖い話〜変な間取り〜』は、一般投稿の“恐怖体験”をもとにしたオムニバス形式のホラー映画です。舞台は“間取りがどうにもおかしい家”という共通の場所で、3つのエピソードから構成されています。上映時間は 82分。製作・公開は2024年です。


あらすじ(各エピソード別)

以下、ネタバレを少し含みつつ、各エピソードの概要を紹介します。

エピソード01「禁じられた部屋」

時代は2002年。若い姉妹エミとサエが、古びた民宿を訪れます。持ち込んだビデオカメラで室内を撮影しながら探索していたところ、2階奥に「立ち入り禁止」とテープで目止めされた部屋を発見。間取り図にもその部屋が記されておらず、「どうやら物置として使われていたようだ」という説明だけが残されているその部屋に、姉妹は次第に不安を抱き始めます。
このエピソードでは、“目に見えないもうひとつの部屋”“設計図に無い空間”という間取りのズレが、最初の恐怖の引き金となっています。

エピソード02「話し相手」

時代は2023年。妻を亡くして深い悲しみに暮れる男・亮太が一軒家で一人暮らしをしているところから始まります。ある日AI(人工知能)と会話できるアプリの存在を知り、妻と同じ名前「みすず」をそのAIに付けて使い始めます。当初は慰めとしての会話だけだったものが、次第に亮太と“みすず”/家の間取りの中での“居場所”との関係が歪んでいきます。
“家”という設定が安心の場である一方で、この物語では「ひとり/孤独/仮想の話し相手」という要素が間取りの安心を裏返す役割を果たします。

エピソード03「林に埋まった映像」

時代は2018年。心霊スポット探索を行う配信グループ「かげろう調査団」が、視聴者からの依頼で “一家心中があった家” の調査を引き受けます。そこで半分土に埋まった HDD とカメラ記録を発見し、そこに残された映像が家の構造・事件の痕跡・間取りの異常を浮かび上がらせるのです。
このエピソードは、なぜこの家に異常が起きたのか、その“根源”に迫る分として機能しており、前二話の間取りのズレの背景を提示する役割も担っています。


解説:間取りが持つ意味と恐怖

この映画の核となるテーマは「間取りのズレ」です。住まいとしての設計・動線・安心感という構造が、少しずつ壊されていくことで恐怖を生み出しています。以下、ポイントをいくつか整理します。

1. 設計としての異常

通常、住宅や宿泊施設では「玄関→廊下→居室/水回り」「窓は外部に面する」「階段や段差が合理的に設計されている」などの“当たり前”があります。しかし本作では、「間取り図にない部屋」「立ち入り禁止の隠された部屋」「窓が意味をなさない位置にある」「動線が途切れている」という“設計の破綻”が提示されます。これにより“住まい”という安心できる場が、むしろ不安定・危険な場になっていきます。

2. 安心圏の逆転

“家=安全な場所”という認識が、間取りのズレによってひっくり返ります。住んでいる/泊まっている家なのに、「どこにいるかよく分からない」「出口が見えない」「動線を辿れない」といった感覚が芽生え、「安心ではなく怖い場所」へと変化します。観客も「もし自分の家の間取りが少しおかしかったら…」という想像を働かせてしまうため、その恐怖は身近に感じられます。

3. 時間・痕跡・履歴というズレ

建物・間取りには“過去”という履歴が残ります。前の住人の名残、変更された構造、封印された部屋など。これが“間取りが変だった理由”の伏線になります。例えば、立ち入り禁止の部屋があったということは、“手を加えられた/封じられた”何かがあったという暗示。そうして構造的なズレ=時間的なズレとしても読み取れます。

4. 観察・発見の恐怖

この作品では、視聴者・観客自身が「この廊下の先は?」「この部屋はどうつながっている?」と間取りを観察しながら鑑賞することが推奨される作りになっています。違和感を自分で見つけること、気づくことが恐怖体験を深める要素です。「普通じゃないもの」に気づいた瞬間、“理解できない”という感覚が恐怖へと変わっていきます。


見どころ・注目ポイント

  • 共通舞台の設定:3つの話は別々に見えて、「同じ家」「同じ間取り」の変化・時間軸のズレを通じてつながっています。観賞中に「あ、この部屋、さっき出てきた構造と似てる…」と感じると楽しさ・怖さが増します。
  • 間取りを怖さの軸にしている点:幽霊・怪異といった典型的な要素に頼るのではなく、住空間そのもの、構造そのものを怪異として捉えているため、“見慣れた家”が怖くなる感覚があります。
  • 映像スタイルの多様性:ホームビデオ風、モキュメンタリー風、ドラマ再現風などの手法を組み合わせ、間取りがおかしいという構造を様々な視点から提示しています。
  • 出演者・演技の意外性:主役級のタレントや芸人が演じており、「この人がこんな風になるのか…」というギャップも恐怖を増幅します。
  • 観察の楽しみ:単なる怪奇現象の連続ではなく、「この部屋の向こう、どう繋がってる?」「この扉、開けていいのか?」と自分で考えながら観ると、より没入できます。

感想・評価・視聴上の注意点

レビューでは「短時間でテンポが良い」「間取りのズレというテーマが新鮮」といった評価が多く見られます。 ただし、「説明が少ないため、間取りのズレをしっかり把握しないと恐怖が浅く感じる」という声もあります。

視聴前に押さえておくと良いポイント:

  • ただ流して観るより、画面内の構造(ドア、窓、廊下、動線)に注意を向けると怖さが増します。
  • 怖さのタイプは「人が突然飛び出す」「血がドバッと出る」というタイプではなく、「構造の違和感」「気づいたら閉じ込められそう」というじわじわ系です。
  • 夜・薄暗い時間帯・イヤホンで観るなど、視覚・聴覚を集中させる環境だとより没入できます。

まとめ

この映画は、「家」という最も身近な場所を、その構造・間取りという視点で崩していくことで、恐怖を生み出しています。住まい=安心という常識が揺らぐとき、最も深い恐怖が生まれます。

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